海外人材の退職に悩む企業が見落としがちな5つの視点
更新日:7月8日
普段、日本の職場では意識されていない、ちょっとしたことが外国人社員の離職につながっているケースがあります。外国人と一緒に働く皆さんに知っておいて頂きたい5つの視点をまとめてみました。
1)指示でも指導でもない「自分で考えて」が発生していませんか?
日本語を母国語としない、外国籍の働き手に対しては、日本人と同じように「空気を読んだ」対応を期待する前に、言葉の問題を解決する必要があります。日本語を母国語とする者同士の会話では、抜けている部分が多少あっても、内容を推測することができますが、これは日本人が「察する」ことに慣れているからです。
直接的な言葉で表現する文化を持っている国も多く、「自分で考えてもらうためにも、特に言わなくて良いだろう」という考えは、相手の混乱を引き起こし、仕事へのモチベーションを低下させる可能性があります。
2)給与や労働条件はきちんと明確な文書で伝えていますか?
厚生労働省の指針に『事業主は、外国人労働者との労働契約の締結に際し、賃金、労働時間等、主要な労働条件について、その内容を明らかにした書面を交付すること。その際、外国人労働者が理解できる方法により明示するよう努めること』と明記されています。
つまり、労働条件を正確に伝えるため相手の母国語で書類を作成するなどの配慮が必要ということになります。
また、福利厚生や諸手当を手厚く設定している分、本人への毎月の手取り額が少なくなっていることがあり、このような状況を理解してもらうことも大切です。
3)具体的に伝えていますか?
前述したように、日本は他の国と違い「察する」文化が根付いています。日本語にはあいまいな表現が多いため「Yes or No」といった、はっきりした回答を求める外国人にはなかなか理解されず、誤解や困惑を引き起こすことがあります。「上手いことやっておいて」や「なるべく早めに」といった曖昧な表現は同じ母国語で育った日本文化を理解する者には通じますが「上手いこととはどういうこと?」「なるべく早くは具体的にいつまで?」といった疑問が浮かび、認識のズレが発生してしまいます。
特に仕事上では、状況、要望、協力体制、場所、期限といった前提となる情報をはっきりと具体的に相手に伝えることが大切です。何をいつまでにどこで誰とするべきか、最終的に求められる結果は何かといったことを明確に伝える意識が必要となります。
4)積極的にコミュニケーションをとれていますか?
外国人社員と日本人社員の間で、文化や習慣の違いがもたらす誤解や、すれ違いが起こることもよくあります。生まれ育った環境によって、時間の概念や宗教観、生活習慣は大きく異なります。
文化や習慣の違いを理解し、日本の価値観を押し付けるのではなく、相手の意見や気持ちに真摯に耳を傾けことが重要です。
各々が持つ価値観が違うからこそ生まれる新たなアイデアも期待できます。
言葉の壁があり、なかなか理解できない場合も多いと思いますが、身振り手振りで「相手に何かを伝えようとしている」こと自体を感じ取ってもらうことも非常に大切なので、コミュニケーションをあきらめず積極的に接することで良い職場が築けます。
5)宗教の違いに対する配慮が欠けていませんか?
日本では宗教を「その人の一部」とは捉えていない傾向があり、海外から来て住む外国人の中には宗教の違いによる不便さを感じたり、宗教が理解されないといった悩みを抱える人もいます。
日本で働く外国人にとって「宗教に対して配慮がされているかどうか」は仕事を続ける上でとても重要なポイントとなります。宗教によって食べられない物もあり、礼拝の時間やその場所についても問題となることがあります。そのため、宗教に対し適切な配慮を心がけ、職場環境の整備と、一緒に働く日本人従業員の理解向上が大切となります。
日本で生まれ育った私たちにとっては「当たり前のこと」でも、文化や習慣の違う外国人には「そうとは限らない」のが当然です。
どの国でも言えるかもしれませんが「自分の国の当たり前は世界のスタンダードではない」ということを、まず念頭に置いて接していくことが大事かもしれませんね。